アルダジ語録


『ア』

アレス(名):国名。王/女王並立制の王政を敷く。国民五万人程度の小さな国。一年の大部分を雪に閉ざされた国である。そのため、穀物が育たず、主食はフォム芋である。酪農等の畜産業が主な産業で、この国のマクやマクゥ、羊や山羊の毛織物は一級品とされる。


ヴァ(副):獰猛な。


ヴァヤ(名):猛禽。猛禽類。


ヴォ(形):大いなる。偉大な。


ヴォルク(名):大いなる獣。転じて、狼。


ウル(名):香草。香辛料。香りの強いもの。


オール(動):発酵する。


オル(動):発酵した。(接尾語として)発酵させた。





『カ』

(助):~の。


カッジャロ(名):大山羊。長く、太く、ねじれた、美しい角と、白く長い毛並みを持つ。岩場では随一の機動力を誇る。


キィ(名):芽。種や木の枝から生えた新しい葉。


キリル(名):芽吹き。転じて、希望という意味にも使われる。


クーク(形):知恵のある。賢い。


ククヴァヤ(名):フクロウ。


言葉に魅入られた子(名):見たこと、聞いたこと、感じたこと等をひとつ残らず記憶する能力を持ち、記憶した事柄を言葉にして書き残さずにはいられない者。言葉に宿るモノに愛されたがゆえに、その加護によって、書き残したいことを脳裏に描きながら紙を指先でなぞるだけでそこに文字を記すことができるという。数百人にひとりの確率で生まれる。その特徴から、戦記司等の職に就かされることが多い。




『サ』

シィヤ(名):樹木の一種。比較的低木。小さく分厚い葉と、ざらざらした灰褐色の幹が特徴。この樹は硬く薄い殻に覆われた楕円形の実をつける。この実は食用とされ、殻を剥いて炒ったり、すりつぶして粉にして料理に利用されたりする。可食部は、ほのかに甘い。


シャッロ(名):山羊。羊より肉質は固いが、丈夫で育てやすい。土地の貧しい国では大切な財産であり食糧。


シャロゥ(名):羊。食用にも革にも糸にもなる、大切な財産。


シュル(動):悪戯する。


シュッラ(形):悪戯な。


シュッラ・ピナ(名):悪戯な小さいモノ。悪戯っ子。主に、お菓子をくすねて、代わりに木の実などのお礼を置いていく悪戯妖精のことを指すが、悪戯をする子供をからかうためにも使われる。シュッラ・ピ・ラァナが元の発音。


シュッル(動):悪戯した。


白の子(名):生まれつき、真っ白な肌、白銀の髪、銀の瞳を持つ子のことを云う。一般的に黒髪黒眼やそれに類する濃い色の髪や目を持つダジル人にとって、白は死の色であるために忌避の対象であったが、現在はそのような風習が薄らいできており、都市部では、ごく普通にとまではいかないが、受け入れられているようである。アレス国では真っ白な肌、白銀の髪をもつ者が王家に生まれることが多いため、むしろ大切にされる。


精霊(名):この世の万物に宿る、大いなる力を持つモノたち。『詩』に応えて力を貸す対価として、生気を奪っていく。様々な種族がおり、己の種族の血を引き、精霊を見ることができるモノを愛している。


戦記司(名):「せんきし」と読む。いくさしるすつかさ。戦をはじめ、あらゆるものを記録に残す役職の名。基本的にその血筋から選ばれるが、孤児のなかに「言葉に魅入られた子」がいれば、その子を血筋に引き取って就かせることもある。戦時は前線にも赴く役職であり、かなりの危険を伴う。多くの役職のなかでも、最も『精霊たち』とのふれあいが多い役職であり、適性が問われる。





『タ』

ダジル(名):国名。王政を敷く。国民七万人程度の比較的小さな国。冬は雪に閉ざされるが、夏は比較的農業に適した季節となる。しかし、土地のせいか穀物はあまり育たないため、フォム芋が主食。山羊や羊等の畜産等も行うが、それはあくまで国内での食用であり、鉱物を加工し、装飾品とするのが主たる産業。鉄鋼の加工にも長ける。


地の上を歩むモノの詩(名):アレス王家に伝わる、口伝の詩。アルダジ語ではなく、不思議な抑揚をつけて吟われるそれは、数百篇に及ぶというが、詳細はアレス国の王家しか知らない。アレス国の式典等にて、そのうちの一篇を吟うことが多い。


トト(名):神。神様。尊いもの。


トト・ナ・シュルグ(名):神様が悪戯する夜。アレスやダジルの神話では、星は神々が地上を覗き見るために夜の天蓋に開けた穴だとされている。そのため、星が綺麗に見える夜は《トト・ナ・シュルグ(神様が悪戯する夜)》といって怖れられる。こちらから神々の側がよく見えるということは、神々にもこちらがよく見えるということなので。


トント(名):古い言葉で、トトより格は低いが大切な存在を意味する。現在は日用語としてはあまり使われず、人名として使われることが多い。現代語に訳すとすれば『愛し子』か。





『ナ』

(助):~が。


ナール(動):煮る。


ナル(動):煮た。


ナフォム(名):ダジル、アレス両国の主食。フォム芋を水で煮潰して味付けしたもの。ナル(煮た)フォム(芋)が語源。味付けは岩塩が基本だが、各家庭によって異なり、出汁を入れたり、ウル(香辛料)を入れたり、マクゥ(バター)を入れたりとバリエーションが豊か。水ではなく、山羊や羊の乳で煮潰す地域もある。


ナマァル(名):アレス、ダジル両国でよく飲まれている、山羊や羊の乳で香草や香辛料、茶葉などを好みの配合で煮出し、蜜を溶かした飲み物。ナル(煮た)マ(乳)ウル(香草)が語源。


猫の館(名):ダジル国の下町にある酒場。ネーシャが店長をしており、看板歌姫のエシリアとおいしい酒や肴をめあてに、今日もたくさんの客が訪れて賑わっている。香草入りの乳酒や果物の蒸留酒は絶品。




『ハ』

ヒュタル(名):氷渡り。巫女的意味合いもある。氷を渡ってなにかを届けるひと。


ヒュソル(名):氷遊び。氷の上を滑る遊び。


ピナ(名):小さいモノ。主に妖精や子どもを称する際に用いる。


フォム(名):芋の一種。少し粘り気が強い。寒さに強く、多少痩せた土地でも育つため、雪国や土地の貧しい国の主食となっている。




『マ』

(名):乳。


マァ(形):乳の。


マオル(名):乳酒。香草入りの乳酒。


真白の詩(名):ましろのうた。『地の上を歩むモノの詩』のなかで、唯一欠けている一篇。かつて、雪の化身の如く真白き者がその詩をうたったとき、死したる者が死の淵より舞い戻ったという伝説からその名がつき、死者を蘇らせる詩だと考えられている。


マク(名):チーズ。


マクゥ(名):バター。





『ヤ』

ヤー(名):鳥。


ユヌ(名):魔。魔物。害をもたらすもの。異質なもの。


ユン・ガ・ラナ(名):魔の子。青い目と茶色の髪を持っている。血の濃いものは、獣の特徴を持っていることがあるといわれる。




『ラ』

ラァナ(名):民。民族。一族。


ラク(名):塊。ひとつにまとめたもの。


ラナ(名):子。こども。子孫。


リュヌ(名):狭間。境界線。


リュン・ガ・ラァナ(名):狭間の民。精霊と人の間に生まれたものたちの子孫。青い目と茶色の髪をしていることが多い。なかには精霊の特徴を色濃く残し、獣のような耳や尾を持つものもいるという。


リル(動):生える。芽吹く。


ルク(名):犬。もしくはそれに類する獣。


ルグ(名):夜。夜間。暗い時間。





『ワ』