「…朔」
広く暗い部屋の中、
名を呼ばれて、一歩前、
「なにか」
ふわりと紡がれた声は、暖かい。
玉座に座る、傲慢な顔をした男は、忌々しげに表情を歪めた。
「貴様、またも標的を逃がしたな…?」
「こちらに手出しはできぬように細工はしております。
唸るような男の声に、朔は挑発的な笑みで返した。
男は舌打ちをして、目を眇める。
そして、おもむろに口を開いた。
「…朔、一族の名に於いて汝に命じる。目標を抹殺せよ。…
そう言って手渡された紙に書かれた情報と標的の写真を見て、
しかし、それはほんの一瞬の出来事で、
「…御意に」
そう答えて、朔は身を翻す。
笑みすら浮かべて歩き出す朔の後ろ姿を、