まわれまわれよ花芙蓉
妖しく儚く軽やかに
踊れ踊れよ花芙蓉
お前が乞うのは妖か
お前が恋うのは人間か
・*・*・*・*・*・
淡い色を湛えた空が、どこまでも高く澄みきっていた、
秋の豊作を祝う収穫祭に、その日、街は沸いていた。
たくさんの露天が立ち並ぶなか、
その輪に囲まれた空間の中心には、数人の楽士達と、
彼女が纏った薄絹の衣装を、
それが、合図。
楽の音が鳴り響き始めるとともに、形の良い、
大気に溶け込んだ音達を抱きかかえ、
独特の調子を以て奏でられる楽の音に合わせて拍を刻むように地を
蝶のように軽やかな舞でありながら、何より目を引くのは、
目をそらすことなど赦されないと思ってしまうほどの、
やがて、花のように華やかな軽やかさと、
澄みきった水面のような静寂が流れる。
しかしそれは刹那のことで。
一拍の間を置いて、わっと歓声が上がった。
客の前に置かれたかごの中に、次々と硬貨や紙幣が投げ込まれる。
賑やかな声の渦の中心で、踊り子は……芙蓉は、すっと立ち上がり、
誰もがはっと息を呑むほど、妖艶に。